第1話「反逆者達」





第二次世界大戦。
1945年8月6日午前8時15分広島市広島に投下された原子爆弾(リトルボーイ)その三日後1945年8月9日午前11時2分長崎市 長崎に投下された原子爆弾 (ファットマン)

この二発の原爆は投下と同時に熱線と放射線を伴う爆風を引き起こし、半径2kmを吹き飛ばした。

何十万人の日本人を焼き、建造物を溶かし、生き残った人々にも様々な枷を背負わせただろう。

ある人は発狂し、ある人は嘆き、ある人は悲しみに打ちひしがれ、そうして倒れていった。


しかし、人々の心の中には共通してある感情が渦巻いていた。


怒り…


圧倒的破壊に対しての怒り。

自らも戦場で行っていたはずの破壊に、日本は負の感情を抱いていた。

その感情は長い月日をかけても消える事はなく、渦巻き、膨張し、その黒さを増していった。

決して表に出ることはなく、影を潜めながら確実にその規模を大きくしていた。

大日本帝国の復興を目指して。












<1996年東京>


「ぜっはぁ。はぁ、はぁ。」

出血がひどい。

腹部の銃傷からはとめどなく赤い血が滴っている。

弾は抜けたようだがアバラを折っていったらしく激痛で意識が無くなりそうだ。


俺は横腹を押さえながら東京の街を細々と歩いていた。

普通なら医者にでも行くべきなんだろうが今の立場ではそうもいかない。



途方に暮れていた。この先どうすればいいのか。このまま意識を失ってしまったら俺は終わりだ。

まだやるべき事を果たしていないというのに。

死が近い。

俺はもうすぐ死ぬ。


感情は激しく渦巻いているというのに、出血のせいでだんだんと薄れていく。

歩く事さえ、もうできない。


頭に痛みを感じかろうじて俺は倒れたんだって事がわかった。


「こんな力があっても、結局は数の前に敗れるのか。」




















それから、どれぐらい経っただろうか。

目が覚めても俺はそこが天国だとは思わなかった。俺は自分が倒れた事さえ忘れていたのだ。


しばらく考えて、俺は誰かに助けられたんだと分かった。

今俺は何処とも知らぬ家のベットに寝かされている。傷の手当てもしてある。
一体誰がこんな事を…


俺は部屋を見回した。あまり上品な所ではないようだ。
粗末な作りのアパートか?いや、周りに人気がない。どこか山荘のような雰囲気だ。隠れ家という言葉が似合っている。

復興派がやる事にしちゃ手が込みすぎている。ここまで追い詰めたんだ、ヤツラなら俺を見つけた途端に殺すはずだ。

考えても仕方がない。

助けられた命なら助けたものに文句など言えない。
それに逃げ出す力も残っていない。

腹が減った。

そういえばどの位寝ていたのだろうか、倒れる前も1日何も食べていなかった。

今まで死ぬ死なないで緊迫していたというのに、人間とはこうも楽観的なのだろうか。今は食い物の事ばかりが頭をよぎった。

「玉子焼きが食べたい。」


パッと食べたいものと言われて最初に出てきたのが玉子焼き、なんとも貧相な思考の持ち主だ。

ハハ、と俺は一人で笑って目を閉じた。


もう少し回復したらここから出よう。逃げ出せるか分からない。もうすぐ見張りのヤツがここに来るかもしれない。
だがなんというか不思議な気分だった。

この場所がそんな邪悪な場所には感じられなかった。
俺が唯一持っていたハンドガンも弾が入ったまま置いてある。

殺すつもりも無ければ捕らえるつもりもない。



その時だった。人の足音がこちらに近づいている。この部屋に誰かが向かってきている。

俺は即座にハンドガンを構え、ドアに対してベット裏に隠れた。
体が回復している訳もなく、相変わらずわき腹が痛む。包帯の下からにじみ出た血を押さえ人が入ってくるのを待った。


足音はドアの前で止まった。
先ほど俺がベット裏に隠れるのに物音を立てたからだろうか、あちらも用心しているらしい。
勘のいいヤツだ。


次の瞬間。ドアは一気に開き人影が部屋に入った。
俺は素早く上半身をベットから乗り出し銃を突きつけた。

俺と同じように、大柄の男がこちらに銃を向けている。


「銃を下ろせ。」


男は言った。
俺を殺す気ならとっくに殺している。今更俺を撃つ事などない。
しかし男の目的が尋問なら話は別だ。俺から情報を聞き出した後に殺す可能性もある。


「何故助けた?何が目的だ。」


「ただの人助けだよ。いや、逆かな?」


逆?何を言っている。
だがただの人助けというのは嘘だとすぐ分かった。発達した筋肉、銃の構え方、そして肌の色から見てアメリカ人。
使用している銃は…SOCOM。アメリカ軍か…


瀕死は免れたが、まだ体は消耗している。体もいくつか動かない部分がある。
今の状態でやりあうのはいささか分が悪い。

俺は大人しく銃を下ろした。


「OKOK、それでいいんだ。人の好意には甘えるものだよ。」

男も同じく安堵した様子で銃を下ろした。
たった一人の兵士にホールドアップとは、この俺もヤキが回ったようだ。

「くそ…」


その場に倒れこんだ俺を男は抱き上げてベットへと戻した。

「全く無茶をするやつだ。傷も塞がってないっていうのに。2日も寝てたんだぜお前。」

「…」

2日か、この傷ではそのぐらいだろうな。
それに腹も減っている。

「腹が減ると人間凶暴になるからな、それに思考能力も低下する。今何か食い物持って来るさ。」

「…」


何故だ?何故コイツは俺を助ける?



男が持ってきたのは実に家庭的なメシだった。
白いご飯に味噌汁、焼き魚に玉子焼き。どれも美味い。
顔に似合わず器用なヤツだと俺は関心しながらもくもくと料理を口へ運んだ。

ここまで来たら警戒なんてしてられない。
毒が入っていたらそれはそれでいいさ。生まれ変わったらまた続きをすればいい。

そんなバカみたいな事を考えつつ、俺は出された料理を全て平らげた。


「よく食うな、腹減ってたんだな?」


「…」


腹は膨れた。頭も回ってきた。
これだけ回復すれば十分だ。

体が動かなくとも、力を使えば兵士の一人ぐらいどうにでもなる。
あの力を使えば。

俺は銃を握り締めて気を溜めた。その殺気に男は気付いたのだろうか、俺の肩をポンと叩いていった。


「止めておけ。俺はお前の味方だ。」

味方?
信じられるか。この俺に手を貸すものなど誰もいない。
一人で生きてきたんだ。ずっと一人で生きてきたんだ。
母親を殺したあの日から…

だがコイツの意図に少し興味がある。何故俺を助けたのか全くの謎だ。
裏に組織があるのなら把握しておかなくてはならない。日本人でなければ大日本帝国復興派以外の組織。知っておきたい。

殺気を抜きつつ銃を下ろした。


「まずお互いの事を知ろう。俺はダルガフ・ヴォルビート。お前は?」

「名前を聞いているのか?」

「あぁ、なんて呼べばいいかも分からないんじゃ話す時困る。」

「世間を渡り歩く為の名前なら無い。ただ俺という存在を示す名前なら持っている。」

「何でもいいさ、別に身元を調べるつもりじゃない。」

「ディオス・ガイダス。母さんに貰った名前だ。」

「ハハ、ママに貰った名前か。そりゃ皆そうだ。」

「…」

コイツ、おちょくっているのか?

「ディオス・ガイダス。ディオスか。ディーだなじゃあ。」


ディー…愛称のつもりだろうか。そのように呼ばれるのは初めてだ。
しかし馴れ馴れしいヤツだ。アメリカ人というのは皆こんななのだろうか。

ともかく、コイツの真意を聞かなければ敵かそうでないかを知ることは出来ない。


「それで、いいかげん聞かせてくれ。お前の目的はなんだ?何故俺を助けた、俺の事をどこまで知っている?」

「第二次世界大戦終焉以来、日本が連合国へと参加と戦争離脱をうたった裏で、次なる世界大戦の準備を進めているという情報を米国が嗅ぎつけた。大日本帝国復興派ここではそう呼ばれているらしいな。」

復興派の事か。アメリカも鼻が利くものだな。

「その組織は極秘裏に新型兵器の開発を行っている可能性がある。」


そこまで情報が漏れているのか。さすが米軍と言った所か。


「その新型兵器が、核エネルギーを用いたものではないかという噂が立っている。」


復興派は米国に投下された原子爆弾に対して、異常なほどの恨みを持っている。もし報復を行うとすればそれが妥当だろうな。


「アメリカ政府は事を荒立てる事なくその事実を確かめる為数人のエージェントを派遣した。」



非核三原則が破られればそれだけでアメリカとの友好関係は断ち切られる。日本との友好関係を結んでいるアメリカも事を荒立てたくはないという事か。



「それがそのエージェントという訳か。」

「ダルガフ。ダルガフ・ヴォルビートだ。」

名前で呼べって事か。いちいち勘に触るヤツだ。
まぁいい付き合ってやるか。

「ダルガフ。」

「そうそう、ダルガフ。」

ダルガフは満足そうに頷いた。単純なヤツだ。
俺のコイツの第一印象は、筋肉単純バカ。
戦場なら即死だな。

「確かに俺は調査の為日本に派遣されたエージェントだ。日本政府にも気付かれず復興派の調査をするのが目的。だが調査対象は他にもある。」

「ほぅ。」

「もう一つは復興派に対抗する一人の人間。白髪にブラッディアイ、銀の装飾銃を持ち、未来予知の能力を持っているという。誰が呼び始めたかは知らないが俺たちの間ではこう呼ばれている。ホワイトケルベロスと。」

やはりアメリカは鼻が利く。さっそく俺の調査を始めたか。
コイツもただの敵という訳か。

「ディーも白髪に赤い瞳だったな。」


「知らんな。」

やはり早いうちに殺しておくべきだった。さっきのメシに毒が盛ってなかっという保証も無い。やけにならずにちゃんと考えれば良かったんだ。
今更ながら後悔してもどうしようもない。体は回復したんだそれだけでも若干こちらが有利になった、後は力を使えばなんとでもなる。

ハンドガンは…?
先ほどメシを食う時にテーブルに置いたんだった。ベットに座ったままでは取るのには少し遠い、ヤツの意識がそれた時でなければ。


「いい銃だな。」

ダルガフはおもむろに俺のハンドガンを取り上げた。
俺の考えに勘付いたとでもいうのか?
いや、大丈夫だ。俺が怪我をしているという事で油断している。


「始めてみる銃だ。デザートイーグルに似ているが少し形が違うな、口径も小さいし総弾数も多い。」


ダルガフは銃をまじまじと見つめ言った。
やはり軍人だけあって武装には興味があるのだろうか。


「ロングバレルか。グリップも手が加えてあって手に吸い付くようだ。なんて銃なんだ?」


ダルガフが銃に注目している。ヤツの視線には俺は全く入っていないはずだ。


タイミングを計り、俺は一気にダルガフに飛びつき銃を奪った。
飛びついた衝撃でダルガフは倒れこみ、俺はヤツ上に乗って銃を頭に突きつけた。





「この銃の名前を教えてやる…母さんに貰った俺の牙、アルセリア・レーヴァント。」

「ディー。」

「気安く俺の名前を呼ぶな。殺すぞ。」


突きつけた銃の先に、憎しみの篭った二つの眼が俺を見つめている。

そうだ、これでいいんだ。

俺はいつもこういう目で見られて生きてきたんだ。憎まれ、嫌われ、怯えられ。そう思われて生きてきたんだ。


「撃てよ。」


命乞いをするかと思ったが、ダルガフから放たれた言葉はそれとは全く別のものだった。
開き直ったとも取れるその態度に、俺は少なからず動揺している。

何故だ?人差し指が動かない。今まで何回これを繰り返してきたんだ。今回だってやれるはずだ。



「撃て!!」


ダルガフのでかい声に押されて、俺は考えなしに引き金を引いた。こうしようと思っていたのに、何か突発的な事故のようにも思えた。

引き金を引く瞬間俺はダルガフに映った俺の目が見えたような気がした。怯えていたのは…俺のほうだったのか。





放心状態になりかけながら、俺はダルガフの目を見た。

まだ俺を見ている。生きている…

見ると弾はダルガフの頭部をかすめ、床を撃ち抜いていた。



俺は安心しているのか?





「動くな!!」


突如鳴り響いた怒声。これはダルガフのものではない。

窓から武装した兵士がこちらにライフルを向けている。他にも数人の気配がする。AK-47か、一瞬で蜂の巣だな。
今の銃声で駆けつけたか。クソ、頭が足りなかった。
最初からこうするつもりだったんだ。俺はまんまと罠にはまったというわけか。



「ダルガフ…貴様。」


「これでおあいこだな、ディー。」


訳の分からない事を言うと、ダルガフは携帯していたSOCOMを取り出し、俺にライフルを突きつけていた兵士を打ち抜いた。
コイツ一体?


ダルガフは俺を担ぎ小屋から飛び出した。

呆気に取られた他の兵士だったが、素早く俺達にライフルを構え発砲した。

ダルガフの足が速いというのと、夜間だったという事で弾は思いのほか当らなかったが…


「クッ…」

「ダルガフ。」

一発の銃弾がダルガフのわき腹を掠め、その箇所からじんわりと赤い血が染み出た。
しかしダルガフは止まる事無く、発砲が収まるまで夜の森を走った。




しばらく走って、草むらの中に俺達は隠れた。開拓されていない森は深い草むらがそこら中にあり、この暗闇ならばしばらくは見つからないだろう。



「何故助けた?何故?」

あの屈強だったダルガフも流石にこれには堪えたらしい。
くしくも以前の俺とダルガフの立場が入れ替わっている状況だった。


「高度経済成長を遂げた日本の技術があれば、大国の成しえなかった新型核兵器の開発もありうる。アメリカ政府上層部はそれを恐れ、そして欲しがっている。いつ起こるやもしれない世界大戦に備え恐怖を埋め固めるように兵力を増強している。しかし国民の誰もが戦いと勝利を望んでいる訳ではない。戦争で傷ついたのは敗者だけではなく、敗者同様勝者に残るのは虚しい栄光と傷だけだ…」

ダルガフの目には覚えがあった。
母さんを殺したあの日の俺の目だ。大切なものを失った者の目。


「もう二度と戦争を起こしてはならないんだ!!」



コイツは一体なんなんだ?


敵なのか?それとも味方なのか?



一体俺の敵とはなんだ?

俺を見つめる目が…その全てが俺の敵だ。

憎まれ、嫌われ、怯えられ。沢山の目が、俺を睨んでいる。


いつの間にか、俺はダルガフに銃口を向けていた。



だが…

だが…

だが…

だがッ!!


俺は自分で自分の頬を殴った。それで何かが吹っ切れられるような気がしたから…



「お前は、俺と同じ目をしているから…」

「ディー。」


俺は銃を下ろし、ダルガフへと駆け寄った。



「ダルガフ、傷は?」


「弾が抜けていないようだ。内臓がやられていなければいいのだが。」


「見せてみろ。」


ダルガフの服をめくり銃傷を見てみた。銃傷は左背中に一つだけ、正面に弾の抜けた傷は無い。やはり弾は体の中に残っているようだ。
このままで数十分で危険な状態に陥る。




「クソ、装備を小屋に置いてきた。サバイバルナイフが無い。」


「それがあれば弾を取り出せるか?」


「あぁ、だがあの兵力では無理だ。装備もコンディションも最悪だ。お前だけでも逃げろ。」


「俺が装備を取ってくる。」


「おい、ま…て。ディー、無茶だ。」


「お前はリスクを俺に見せた。今度は俺がお前に力を見せる番だ。」


俺は敵の潜む夜の森へと身を投じた。







相変わらず辺りは暗闇に包まれており、辛うじて月明かりが辺りの森を照らしている。肉眼では敵の位置は全く捉えられない。

葉のこすれる音が辛うじて敵の存在を教えてくれた。


「俺はここだ!!」

そう叫んで、敵の注意を引き付けた。これでこちらの位置は敵にバレた。今頃俺の頭と心臓目掛け銃口を向けているに違いない。
葉のこすれる音が消え、舌なめずりや生唾を飲む音さえ聞こえてきそうなほど静かだった。




根拠も、確証も無い。リスクが大きすぎる事かもしれない。
人を信じれば裏切られる。不安定で心もとない、だが俺はそんな未来を信じている。

転んでも、泣いてもいい…


「俺は俺の信じた未来を選ぶッ」



俺に与えられたたった一つの武器は数秒先の未来を捉える能力。





「ガントリニティ!!」







俺に向けて発射される弾は3つ、弾速から見てライフルか。いや、その内一発はハンドガンクラスだ。近くに潜んでいる。
次の瞬間発射される弾を予知し、軌道から読み取った方向へと俺は走った。

敵が放った幾十発もの弾は俺に当る事は無かった。


俺が走った先には敵兵が一人。もう肉眼で捉えた。



「そこだな。」



敵は第2射の準備を始めている。だがもう遅い、俺はもうお前を見つけた。

すれ違い様に一発、頭に弾を撃ち込みまず一人を仕留めた。




後はスナイパーが2人、残りはまだ潜んでいる。


次の瞬間、後ろの草むらから潜んでいた敵が飛び出してきた。手にはナイフが握られている。
俺は敵の存在に全く気付かなかった。

ここまでの接近を許したのは久しぶりだ。気配の殺し方は褒めてやるが…

「相手が悪かったな。」

未来予知能力、ガントリニティを発動してそいつの攻撃を読みきった。この能力の前にはどんな裏の手も通用はしない。全て読みきる。
背面撃ちでナイフ野朗の頭を撃ちぬいた。

俺が一日に使えるガントリニティは4回。一回ごとに精神的疲労が積み重なる。
もうすでに2回を使ってしまった。

残りは後2回か、しかし体調は万全ではない。残り1回が限界のようだ。

面倒だ。一気に決める。


ガントリニティを発動させ、俺は残りの弾を全て発射した。
その弾は森の闇へと消えた…

ガントリニティによって未来を予測した弾。この弾はどんな事があっても敵を貫く運命を秘めている。
だから…

木をかすり、跳ねながら弾は残りの敵を一人づつ仕留めていった。

聞こえてくる断末魔の数は3人。心なしか少ない気もするがこんなものか。



俺は肺に溜まっていた緊張の空気を吐き出して一息ついた。



ガントリニティの反動で頭の中がガンガンする、やはりそろそろ限界のようだ。体も本調子ではないらしい。3回が限界だな。







「あぶねぇ、ディー!!」

ダルガフの声で、敵兵が真後ろにいるのに気付いた。そいつはナイフを振り上げ今まさに俺を刺そうとしていた。


「ちぃ!!」


敵兵が振り下ろしたナイフを間一髪避け、ハンドガンを撃ち返した。








危なかった…ダルガフが居なかったら俺は殺されていた。

俺はダルガフに助けられたのか…









俺は小屋からダルガフの装備を持ち、ダルガフの元へと戻った。
さすが軍隊出らしく手馴れた手つきで体内の銃弾を取り出した。

「痛むか?」


「あぁ、死ぬほど痛いぜ。医者のベットで看護婦に優しく治療を受けないものだ。」


「そうか、医者か…」

この時俺が医者だったらなどと自分らしくもない事を考えていた。その事をダルガフに言えるはずもなく、この場の小さな思いだと小道に投げ捨てた。





「ディー、悪いが手を貸してくれないか?」

ダルガフはそう言ってこちらに右手を伸ばした。こういう時どういう風な態度を取ればいいのか分からなかった。
なんだか素直にダルガフの心配をすると、あまりに今までの自分とのギャップがありすぎたからだ。

俺は考えた末黙って手を延ばした。


「ありがとよ。」


「あぁ…」















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