「銀河鉄道の夜〜君は恋人のように愛せるか?(妹を)偏〜」




勇者、風間…丈介です。

俺は今敵の本拠地に乗り込もうとしている。


はっきり言って今の俺は無敵だ。主人公補正と地道なレベルアップのお陰でステータスの限界に近づいている。

これはもうチートの域に達している。

ドラゴンでも魔王でもかかって来いって感じだ。





「よし、行くぞカイン。」


「えぇ、最後の戦いです。」




さっそうと駆け出した俺達だったが、どこからともなく聞こえる声に足を止めた。どうやら門番の登場らしい。


「よくぞここまで来た勇者よ。しかし、この先に行かせる訳には行かない。」


この地を這うような声…これは…



見る見る内に地面が割れ、そこから現れたのは30メートルはあるだろうか飛龍だった。
モンスターの中でもかなり上位にいる飛龍。翼を持ち、口から吐くファイヤーブレスは脅威だ。


「よいか勇者よ、我はドラゴンの中でも最も高位に位置するゴールドドラ…」




「死ねェェェェェェェェエエエ!!」


ゴールドドラゴンなど隠しダンジョンで飽きるほど戦った。俺はドラゴンの話聞かず聖剣で串刺しにした。





「龍族が人間に簡単にやられるとは…無念。」





「行くぞ、カイン。」


「はぁーい。」





城に入ると、まさにラストダンジョンの雰囲気を漂わせていた。

スリルのある音楽におどろおどろしい城内。


それに…壁にかけてある絵画は、幸子さんの絵が…


「いい趣味してるぜ。」





俺達はどんどん奥へと進んでいった。

途中襲い掛かってきたモンスターも、別段苦戦する事もなく…




そうして、遂に中ボスっぽいヤツが現れた。


「よくここまで来たな勇者よ、だが!!お前の物語はこれで終わりだ!!この悪魔王デーモン・鈴木が、お前を蝋人形にしてやる!!



ギャグで言っているのか?

現れたのは奇抜なファッションをした顔色の悪いオッサンだ。

中ボスっぽいと言われればそれっぽいが、ただのおっさんと言えばただのおっさんだ。



「まぁいい、さっさと倒して先に進もう。」


俺が剣を引き抜くと、デーモン・鈴木が言った。」


「おっと止めておけ、俺は不死身だ。そんなナマクラな剣で斬った所で何のダメージにもならんぞ?フハハハ、怖いか?怖いだろ、その恐怖が我等悪魔のパワーとなるのだ。お前は私の手によって蝋人形になる運命なのだ。ふは、ふはははははは。」



「キズナオール!!」



「ぐぎゃぁああああああああ!!」



俺はデーモン・鈴木に回復の魔法をかけた。大体不死属性のヤツは回復魔法でダメージを受ける。どうやら的中したようだ。



「貴様ぁ〜何故私が回復魔法に弱いと分かった〜?」



「お前が自分でばらしたんだろうが。」



「ふふふふ、しか〜し。お前の攻撃で俺の心は怒りに満たされた。今こそ見せてやろう俺の本当の姿を…フハハハ、死んだぞ?お前はもう助からない。フハハハハ。」



「…そう。」



「そうやって動じない振りをしても無駄だ。感じるだろう?俺の闇のパワーを…クククク、さぁ怯えて命乞いをしろ!!これがデーモン・鈴木 バーストモード!!」



「キズナオール!!」



「がぁぎゃああああああああ!!」







無駄な時間をすごしてしまった。
俺はデーモン・鈴木を滅殺し、ついに最上階へと到着した。


重い扉を開くと、そこには…



「見つけたぜ、幸子さん!!」


玉座に座った幸子さんと…後ついでに檻に囚われた青葉。



「兄さん!!助けに来てくれたのですね。青葉は信じていました、兄さんならきっと助けに来てくれると。(その後なんやらかんやらつらつらと叫んでいる)」


青葉が何かを言っているような気がするが、今用事があるのは幸子さんだけだ。アンタを倒して俺はこの世界を救う!!



「幸子さん、勝負だ!!」


「来なさいぼうや…。」


「勇者様待ってください!!」

何かに気付いてカインが俺を制止したが、ここまで来てじっとなんかしていられない。俺は幸子さんへと特攻した。


幸子さんが装備しているのはハンドガンが一丁のみ、ドラゴンのファイヤーブレスをものともしない今の防御力ならあんな豆鉄砲余裕だぜ。


「もらったッ!!」


「甘ちゃんボウヤ…」




命中のステータスは限界に近いと言うのに、俺の剣は幸子さんにかわされてしまった。
オマケに貰った回し蹴りで、俺は壁まで吹っ飛んだ。



「ブレイズ・ガン・ブラスタァァァァァ!!」


幸子さんの銃から放たれた業火。どうやら魔力を込めた弾丸を放ったようだ。
俺は避ける事が出来ず、もろに技を喰らってしまった。



一撃でこのダメージか。早く回復しないと死んでしまう…



「あの人は未来を予知する能力を持っているんです、だから勇者様の攻撃は絶対に当たりません。」


何、未来を予知する能力?
そんなスキル聞いた事ないぞ。ボスにだけある特別スキルって訳か?

何にしてもそんな力があるんなら勝てる訳が…

でも負けてなんかいられない。



「キズナオール!!」


俺は自分自身に治癒魔法をかけた。

なんとか動ける位には回復したようだ。



「あら、やっぱりアンタ青葉ちゃんが好きだったのね?そんなになってまで立ち上がるなんて…」


再度立ち上がった俺を見て、幸子さんが言った。

もうここら辺でケリをつけよう。俺は青葉と結ばれたいなんて思っちゃいない。




「違うね。俺は青葉となんか結ばれたいなんて思っちゃいない!!」



「兄さん…」



その言葉を聞いて、青葉が小さく俺を呼んだ。どうやら傷ついているようだ。
しかし、俺だってこれまで散々辛い目にあって来たんだ。もうここら辺で終わりにしてやる!!



「今まで散々苦労してきたんだよ。好きでもないのにまとわりついて、恋人でもないのにちょっかい出されて。いいかげん疲れてたんだよ!!」



俺は今まで蓄積してきた青葉への不満を一気に解放した。きっとそうすればスッキリすると、そう思っていたのに。
一言一言不満を言う度、青葉から笑顔が消える度。言いようのない罪悪感が俺の心を襲った。

だが、言わなきゃいけない。ここまで言って後には引けない。



「俺は、青葉なんか…」




「止めなさい丈介君!!」


俺が最後の言葉を言おうとした瞬間、幸子さんが必死になって俺を制止した。
一体何があるっていうんだ、あんなに必死になって…でももう止められない。俺はもうその言葉を言ってしまったのだから。




「大ッ嫌いだ!!」






「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」









そうして…






そうして…





そうして…








耳を貫くような青葉の叫び声がして、魔女の城は消え去った。


辺りには…


宇宙のような闇の空間だけが広がっている。






「ここは…」





「ここはもう何処でもない世界よ。」





幸子さんの声がして、俺は後ろを振り返った。




闇の中に一人、幸子さんが立っている。
怒ったような表情をして、こちらを睨んでいる。

一体…何があったんだ?



「幸子さん?何処でもない場所って…一体どうなったんです?」




「だから二人には干渉するなって言ったんですよ。」


後ろからカインの声が聞こえた。
どうやら幸子さんに放たれた言葉のようだ。



「カイン、黙ってて。」


「…」


珍しく真剣な幸子さんの言葉…
カインはそれに従って口を閉じた。

どうやら俺の想像を超える大変な事が起きてしまったらしい。





「丈介君、青葉ちゃんの事好き?」


「…そんなの好きな訳ないじゃないですか。俺達は兄弟なんですよ?恋愛感情なんて…。」


「アンタはここまで来たじゃない。私を倒しにここに来た。青葉ちゃんを助けにここへ来たじゃない。」


「それは…それは成り行きっていうか。別な理由があります。」


「アンタが水の国のお姫様にお熱なのも知ってるわ。でもね、今まで辿ってきた道は青葉ちゃんに向かっていたじゃない。」


「そんなの!!幸子さんが運命を操っていたからじゃないですか?」


「私は人の運命に干渉出来る力を少なからず持ってるわ。でもね、でも運命っていうのはその人の行動や思念によって決まる。どんなに私が細工したってそれは変えられるものじゃないわ。」


だったら、俺が青葉を求めてここまで来たっていうのか?
そんなはずはない。そんな事一回だって考えた事無い。


「いいかげん思い出しなさいよ!!なんでアンタを青葉ちゃんが好きなのか!!」



そんなの一度も考えた事無かった。

青葉が…俺を好きな理由…



青葉…




















小学5年生の夏だった…



セミの鳴き声が耳に、晴れ渡る青空が目に記憶されている。

あの夏に俺は青葉に出会った。



家庭に事情があるという理由で、遠い親戚だった青葉は家に引き取られた。

俺はどんな子が来るのかと楽しみにしていたが、やってきた女の子は内気で…初めて挨拶した時も母さんの後ろに隠れていた。



「始めまして、僕が君の兄さんになる丈介。よろしくね。」


「………」


俺が差し出した手を青葉は怯えるように見るだけで、その手が握られる事は無かった。

母さんは俺に ごめんね と言って青葉を自分の部屋に連れて行ったのを覚えている。

何で青葉が俺の手を握らなかったのか、何で母さんは青葉を別な部屋に連れて行ったのか…



俺は後に父から教えてもらった。

青葉は元いた家で父親に虐待を受けていたらしい。そのせいで激しい男性恐怖症に陥った。
そのせいで父さんや子供の俺でさえも口をきかず逃げるばかりだった。



俺はその頃、自分の持っている正義感のようなものがあった。
空手部に入部しており、腕っぷしにも自信があった

自分が良くないと思ったら実力で解決する。

イジメっ子がいたらやっつけ、弱いものに対していつも味方だった。そのせいでクラスでも認められ、周りの大人からも褒められていた。


その自分が持っている正義さえ見せる事が出来れば青葉が心を開いてくれると考えていた。

俺は他の人間とは違う、弱いものに対して俺は認めてもらわなくてはいけない。

何か事件さえあればチャンスさえあれば青葉は俺に心を開いてくれる。そいう単純な…浅はかな考えを持っていた。




そのチャンスはすぐにやってきた。


俺のクラスメートのイジメっ子達。前悪さしていた所を注意したのを逆恨みし青葉にちょっかいを出していたのだ。

俺はすぐに駆けつけ、そいつ等を一瞬のうちに叩きのめした。

泣きながら退散するそいつ等を見届けると、俺は青葉に駆け寄った。



「青葉、大丈夫か。」


これで青葉は俺を認めてくれる。青葉は俺が守るんだ。



「来ないで!!暴力する人なんて大ッ嫌いよ!!」



初めて聞いた青葉の言葉は…

大ッ嫌い。



俺はその時自分の考えが浅はかだったという事にやっと気が付いた。
青葉は暴力を振るう男が怖いんだ。

それなのに俺は青葉の前で暴力を…

それが誰かを助ける為、正義の為なら暴力とは言えないだろう。だが、青葉にとってはどれも同じだ。

大衆には正義でも、青葉にとってはどれも悪だ…



今まで自分は常に正しい事、善い事を選択してきたつもりだった。

でも、それはどうやら自分にとっての正しいこと、善い事だったようだ。今まではそれが偶然まかり通ってきただけで、本当に正しい事はその時の状況、人間、様々な事柄に左右される。

そして、今回俺が選択した行いは最も愚かな行いだった…




泣いて立ち去る青葉の後ろ姿を…俺は呆然と眺める事しか出来なかった…


「ごめん…青葉…」






その日、青葉は家に帰らなかった。

父さんはすぐに警察に電話して、母さんは同級生の家を訪ねた。

母さんがどの家を尋ねても、その家の子供は青葉の友達では無かった。



青葉はいつも一人で辛い思いをしていた…それに今回だって、俺の妹だって事であんな目に…



俺の妹…





「待ちなさい丈介!!」




母さんの制止を振り切って、気付くと俺は家を飛び出していた。

ろくに話もした事がないので、青葉が行きそうな場所なんて想像もつかない。


とにかく、何処でもいい。しらみつぶしに探すしかない。

学校…商店街…図書館…何処も青葉を見たという人間はいない。



俺は走った。今までの行いを思い返しながら走った。

俺は大衆に認められる事に必死で…いや、自分の自己満足の為に、たった一人の妹の気持ちを理解しようとはしなかった。

たった一人の、俺の妹を…青葉…



「青葉!!」




遂に、公園でしゃがんでいる青葉を俺は見つけた。近寄り、声をかけようとしたが、また怖がらせてしまうのではないかと不安で声が出なかった。

どうすればいいのか…

どうすれば…




なんてタイミングなんだろうか…

たちの悪い中学生がたまたまそこ通りかかり、俺達にちょっかいを出してきたのだ。



「ねぇ〜僕〜おこづかい持ってないかな〜?」

カツアゲか。人数は3、見たところ格闘技をしている体ではない。楽勝とまではいかないが勝てない相手ではない。



俺は素早く振り向いて拳を構えた。


が…ここでまた力を振るえば青葉は…


青葉を見ると恐怖のあまり体が硬直しているようだ。泣き叫ぶ事も逃げる事も出来ない。
クソ、こいつら〜


今すぐ殴ってやりたい気持ちだったが、俺は拳を納めた。




「ねぇ〜持ってるでしょ?」



「妹が怖がる。何処かへ行ってくれないか?」


「金出せって言ってんのが分かんねぇのか!?」


「金ならない。だから頼む、他に…」




まだ喋っているというのに、そいつらは俺の顔を殴ってきた。
やはり大したパンチでは無い。


だが、青葉はますます怖がっている。


「ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさい…もう殴らないでください。」



「青葉…。」



フラッシュバックか?青葉はしきりに謝りつづけている。
このままでは…
だが手を出すわけにもいかない。



「頼む、止めてくれ。妹が…」



「止めてくれ?目上のモンには敬語使えや!!」



そいつらはますますエスカレートするばかりで一向に止める気配はない。
さすがに俺もここまでボコボコにされては…


「青葉、逃げる…んだ…」


ダメだ、青葉は完全に硬直している。立ち上がる事さえ出来ない。



「青葉…必ず守る…必ず守るから…安心…するんだ。」



殴られながらも、俺は青葉に話かけつづけた。どんなに痛くても穏やかな顔で、青葉が安心するようにずっと…




「青葉…僕を…僕を…信じるんだ。僕は青葉を…守ってみせる…。」




「うっせー、シスコン野朗!!涼しい顔しやがってムカツクんだよ。」



これが…正しい選択なのか分からない。実際青葉は暴力に直面している。

でも俺はその時青葉の事のみを考えていた。自分の正義や信念も大事だけど、青葉の心を一番に考えていた。

ここで俺が力を振るう訳にはいかない。



だがもし、もし少しだけ青葉が俺を信じてさえくれれば。俺を少しだけ好きになってくれれば…そうすれば力が…力が沸いてくる。




「青葉、俺を信じろ!!」



その時俺には、青葉が俺を見たような気がした。
今までずっと目をそらされていたが、その時初めて俺を見たような気がした。

青葉は、本当に可愛くて俺の妹だなんてもったいないぐらいだった。



「兄さん…丈介…兄さん……………兄さん頑張って!!




「その言葉を…待っていたんだ…。」



俺は不良のパンチを掴み、睨み返した。



「何だ?今更楯突いたって…。」



「貴様等…よくも俺の妹の前でかっこ悪い所を見させてくれたな。」


怒りは十分すぎる程溜まっている。後は拳に乗せて放つだけ…
青葉が応援してくれるなら、思う存分やれる。


「貴様等はこの丈介様が地獄に叩き込んでやる。」





そうして…


やや危なかったが、なんとか不良を撃退した。


ああいう人は一体劣勢になるとすぐに退散する。数が多いと気は大きくなるが拳は鈍る。

気さえ強く持てるなら、一対多は必ずしも劣勢ではない。



俺は今度こそ退散するヤツラを見届けて満足感を覚えた。


すぐに青葉に駆け寄り声をかける。



「青葉、大丈夫か?」


青葉は蹲って泣いている。よほど怖かったのだろう。


俺はゆっくり青葉に近寄って、おそるおそる抱きしめた。
拒絶するようなすぐにでも手を離せるように…

しかし青葉は拒絶する事無く俺の抱擁を受け入れてくれた。




「青葉…ごめんよ…。」



「…にい…さん。青葉も…ごめんなさい。」


「いいんだよ。僕は青葉が応援してくれたから頑張れたんだよ、ありがとう。」


「兄さんの体…あったかい。」


「安心…した?」


「うん。」


「僕は…僕はずっと青葉を守っていくよ。だから…安心してくれ。」


「…うん。」






そうだった…………



それから青葉は…




俺は…ずっと青葉を守るって決めていたんだ…



それなのに…




大ッ嫌いだなんて。



俺が青葉に言われて一番ショックだった言葉だったのに、俺は青葉に言ってしまったのか…






「分かった?」



「幸子さん…」



「アンタは成り行きで銀河鉄道に乗って、成り行きで青葉ちゃんを助けに来たかもしれないけど、それは全部アンタの意思が強く運命に作用してるからよ。」


「………」


「人間は成長するにつれ大事な何かを忘れてしまう。純粋だった頃の大切な気持ちを…」


確かに、俺は忘れていた…青葉の事を…


「そしてつまらない常識でだんだんと目を曇らせる。自分の心でさえ見えなくなる位に…」


「幸子さん、俺はどうすれば…。」



「いい目してるわ。」


やっと幸子さんは笑顔を見せてくれて、俺の背中をドンと叩いた。


「あんた、青葉ちゃんともう一度会いたい?」


「会いたいです。」


「一緒に家に帰りたい?」


「帰りたいです。」


「仲直りしたい?」


「したいです。」


「もう一度エッチしたい?」


「した…なんて事聞くんですか!?


あ、危ない危ない。危うく乗せられる所だった。


「もー面白くないわね。」


「止めてください!!それで、どうやったら青葉に会えるんですか?」



「…えぇ、実はここは青葉ちゃんが作りだした世界なのよ。」



青葉が作りだした?
またマジカルパワーか?



「どういう?」



「実は私とカインはアンタの世界とはちょっと違う所から来たの。」



「それはなんとなく分かります。」

これだけ超常現象起こされたら普通の人間とは思うまい。



「私の世界では運命予知能力者による戦いが激しく、そのせいで他の世界にまで影響が及んだのよ。」


「SFチックな事が起きたんですね。」


「そう、そしてこっからが重要なのよ。各世界にはそれぞれ意思のようなものがあるの、私の世界から及んだ影響はその意思にストレスを与え世界そのものを揺るがす現象をおこした。私はそれを解決する為に来たのよ。」



なんと、バカやってるだけの幸子さんと思っていたがマトモな事してたんだなぁ。


「それで、一体どんな現象が?」


「えぇ、それが…アンタと青葉ちゃんが結ばれないと、この世界が消えて無くなるのよ!!」



……………



……………


「………………?」


????????





「エェエエエエエエエエエ!?んだよ、そのアホみたいな設定は?」



「仕方ないでしょ、そういう事になったんだから。だからアンタと青葉ちゃんをくっつくように私が頑張ってたのよ。カインは私がやりすぎないようについてきたって訳。」


「そういう事ですにゃ〜」



頭イテェ、クソ…マジかよ。
にしてもなんつー世界だ。俺をおちょくっているとしか思えない。

俺と青葉の結婚に世界の命運がかかってるっていうのか?





「ま、頑張りなさい。アンタなら青葉ちゃんと仲良くやれるわよ。」

「そうですよ、丈介さん頑張ってください。」


幸子さんとカインは二人して俺の背中を叩いた。



「あぁ、行ってくる。青葉を止めてくるよ。」



「早くしなさいよ。もう世界は崩壊寸前よ?ここも長くは持たないわ。」

「あぁ、分かった。」


走り去る俺を、カインは不安そうに見つめていた。

「曾お婆ちゃん、ボクも行くよ。」

駆け出そうとするカインを、幸子は肩を掴んで首を横に振った。


「大丈夫よ、私のガントリニティで見た未来ではちゃんとこの世界が存在している。」

「でも、いくらガントリニティでも確実な未来を見れる訳じゃない。その後の行動で運命は変わってしまうんだよ?」

「信じるのよ。あんたの父さんが本当の未来を掴み取ったように、あの子ならきっと本当の未来に辿りつけるわ。」

「父さん…」

「アンタもいつかこういう日が来るかもしれない。でも未来を信じるの、ガントリニティでは分からない未来を信じるの。」

「…うん。ボク信じるよ。」


そうして、二人は闇に溶けるように何処かへと消えていった。
きっと元に世界に戻ったのだろう。















俺は闇の中を走った。何処にいるかなんて分からない。


だが青葉に会いたいなら、ひたすら走りつづけるしかないんだ。


青葉の事を想っていればきっと会える。


離れていても、絶対繋がる事が出来る。


あの日のように、俺は青葉を…








そうして…俺は青葉を見つけた。

あの日のように、蹲って固まっている青葉…


ごめんと言えば俺の心は楽になるが、それは余りに卑怯な行いのような気がした。




「…青葉…」





「来ないで…」




小さく放たれた青葉の言葉…俺を拒絶する青葉の言葉。

こんな青葉、どれだけ久しぶりに見ただろうか。

いつもが余りに元気すぎて、コイツの本当の心を忘れていた。

思い上がっていた小5の自分と同じように…




「青葉聞いてくれ、俺は…」



「聞きたくない。私を大ッ嫌いな兄さんなんて大ッ嫌い!!」




その言葉と同時に、青葉の頭から巨大な何かが出現した。

それはみるみる形を持ち始め、ついには…


「巨大…ロボット?」



そうだ、昔見たアニメに出てくるようなロボットの形になったのだ。
胸にはVのマークがあり、腕はいかにもロケット噴射で飛びそうだ。きっとあの目からはビームが出るに違いない。

青葉はそのロボットの頭に乗り込んだ。

まさか…ソイツで俺を攻撃する気じゃないだろうな?

「止めろ、青葉。」




「うるさい!!兄さんが私を大ッ嫌いな世界なんて、大ッ嫌いな世界なんて…消えて無くなってしまえばいいんだ!!」


案の定巨大ロボットの目からはビームが飛び出し、危うく俺は貫かれる所だった。
避けた俺をそれて放たれたビームは辛うじてこの世界に存在している地面を焼き払った。その部分は割れたガラスのように崩れ去り、下には本物の闇が渦を巻いている。


ブラックホールのようにも見えた。

俺はその時直感的に思った。

この床の下には巨大なブラックホールが存在し、この床はそのフタのようなモノだ。もしこれが全部無くなったら…



「本当に…世界が無くなってしまうのかよ!?」



「消えちゃえ!!」


またも案の定ロボットは腕を飛ばして俺を攻撃してきた。


「ベタ過ぎるっベタ過ぎるけど、危ねぇ!!」


俺は2つのパンチをなんとかかわし、またも床が割れてブラックホールがむき出しになった。




「青葉…」




俺に出来る事、俺が…青葉に出来る事…





「もうイヤ!!」



今度は胸のマークからのビーム。

見た感じ必殺技っぽいな…

俺は今度の攻撃は避けなかった。その代わり、俺は言葉を返した。

やられる自分を見せて同情を誘うなんて、我ながら卑怯だとは思うが…今俺に出来る事はこれぐらいだ。




「青葉ぁぁぁあああああ。ごめん!!」






灼熱の熱線が俺の体に降り注ぎ、俺は吹っ飛んだ。

さすがに生きているのが不思議な位だ。

前の世界でレベルを上げていたのがまだ有効なのかな?





「兄さん!!」

青葉は俺を心配した様子で俺を呼んだ。

よかった、少しは頭を冷やしてくれたか。




「青葉…」


俺はこときれそうな体にムチうって青葉に話かけた。



「本当にごめん。俺は…意地っ張りで、素直じゃなくて…本当の気持ちを忘れて…いたんだ。昔約束したのに…青葉を守るって…約束…したのに…すっかり…忘れてた。」


「兄さん…」


「大ッ嫌いなんて言ってごめん。俺のたった一人の…妹…青葉…これか…も…ずっ…と…守って……守るから……。」



こういう状況にならないと、俺は素直な気持ちを言葉に出来ない。

大人になるっていうのはこういう事だったのかもしれない。

本当の答えを、本当の気持ちを、段々と忘れていく。

でも、思い出す事だって出来るはずだ。そうして口に出して大声で叫ぶ事だって出来る!!




「青葉!!好きだ!!今度こそ、本当に、本当に、本当に!!結婚してくれ!!」




「兄さんっ!!…はい!!結婚してくだい。」



よかった、言えた。

なんか最終回の流れでとんでもない事を言ってしまったが、もうどうでもいい。なるようになる。

俺は今青葉と一緒に元いた世界に帰りたい、その気持ちだけは本当だ。




「あれ、兄さん。このロボット止まらない。逃げて兄さん!!」


青葉の意思に反して、ロボットは勝手に動き始めた。

そうか、アイツは世界を壊そうとする意思そのもなのか…

クソ、予想外だったぜ。



「キズナオール!!」


何者かが呪文を唱え、俺が負った傷はみるみる内に回復した。
一体…


「カイン…助かったぜ。」



「丈介さん、最後の手助けです。使ってください。」


傷を治してくれたのは人間の姿に戻ったカインだった。
カインは俺に聖剣 ムラサメキャリバーZ を託してくれた。


「サンキューカイン。」


「頑張って!!勇者様!!」



そうだ、俺は勇者なんだ。

悪者をやっつけて、お姫様(実妹)を救うんだ!!




「行くぜデクの坊、勇者の剣を受けてみやがれ!!」


さっそうと斬りつけたが、圧倒的にデカさが違う。
俺はロボットのパンチに返りうちにされてしまった。


「ぐあぁは!!」


クソ、やっぱりダメなのか?
もうこの世界も半分以上ブラックホールに飲まれている。もう…ダメか?



「兄さん、頑張って!!」



「青葉…よぉぉし、そうだ、その言葉を待ってたんだぜ!!」


俺は聖剣を構え走りだした。
今まで伊達に冒険してきた訳じゃねぇ。


「聖剣よ、力を解放しろ!!ファイナル絶空 覇王 滅殺サンシャイン・ブレイド!!」 


俺の最大にして最強の必殺技。

光と伴った超絶剣技はロボットの右腕を切り裂き、俺は青葉を抱いて飛んだ。



「兄さん…」

俺の顔を見るや否や、青葉は俺を抱きしめた。


「青葉…」


「信じていました。兄さんなら青葉を助けてくれると…」


「あぁ、さぁ最後に決めて父さんと母さんに会いに行こう!!」






もう〜つっこみは無しだ。

流れ…そう流れと思いつきと、そして何よりハートで行動すればいい!!



俺は青葉と共にムラサメキャリバーZを持った。


「ムラサメキャリバーZお前には散々世話になった。だがもう一度、最後の力を貸してくれ!!」


俺が呼びかけると、ムラサメキャリバーZは答えるようにまばゆい光を放った。

ありがとうムラサメキャリバーZ 変な名前って思っててごめんな。結構イカス名前だぜ。



「青葉、怖いか?」


「兄さんと一緒なら、ぜんぜん怖くありませんわ。」


「上等!!」


ぐだぐだと、くだらない話に終止符を打ってやる。

やっと辿りついた俺の答え、俺の気持ち。



「青葉ぁぁぁぁ、今度は白のニーソでプレイしてくれ!!」


「ブーツも合わせて買い揃えますわ!!」


もう余計な事は考えねぇ。青葉と二人で…
元の世界に帰るんだぁぁぁぁああああああああ!!





「ラァァブラブ!!ファイナル絶空 覇王 滅殺サンシャイン・ブレイド!!斬ィ裂ェェェエエエ!!」








ロボットを切り裂き、眩い光は無限光の如く当りを包んだ。

一つの星の誕生を俺は見たような気がした。

そして…






俺と青葉は…元いた 銀河鉄道に乗っていた ………



「銀河鉄道…次は…終点…終点…」


アナウンスが鳴り響き、どうやら父さんと母さんがいる星についたようだ。




「終点…終点…」








END

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