「銀河鉄道の夜〜妹偏〜」
こんにちわ、始めまして。この物語の主人公の 風間 丈介(かざま じょうすけ)です。
高校1年の普通の男子高校生。ただ違うのは親が旅行中で家には中学2年生の妹と家に二人暮しという事だけだ。
普通旅行といえば温泉宿に一泊二日とかそのぐらいのレベルなのだが、うちの両親はなんと宇宙に旅立ってしまったのだ。
二人とも子供の頃から夢だとか行って、止める俺を振り払い訳の分からない星に行ってしまった。まったく…
旅立ったのが去年の3月、現在8月で夏休みなので半年近く家を空けている事になる。
別に寂しくはないし、自炊は出来るし困っている事はないのだが…問題は別にある。
「はぁ、また来たか。」
11時過ぎ、俺がいつも床につこうとするとアイツがやってくる。
激しい足音が階段をあけ上がって来るのが聞こえる。真夜中だってのに近所迷惑な事だ。
俺は布団を頭までかぶり電気の部屋を消した。
足音は俺の部屋で止まりドアノブにソイツが手をかけた。
ノブを回すがドアは開かない。それはそうだ、何故ならドアにカギをかけたからだ。
俺はにやりと笑って目を閉じた。
「ちょっと、兄さん!!開けてよもぅ。」
もう分かっているかもしれないがドアの前で大声を出しているソイツは俺の妹だ。
親が旅行に行ってからというもの、必要以上に俺を好き始めた。
まぁそういう年頃なのは分かるが相手が間違っている。俺は兄でアイツは妹…ベタな設定だと笑いたくば笑うがいい。
俺だって妹だって事を無しにしても、アイツと結ばれる気はない。なんというか合わないのだ。
例えばそう…俺がサラリーマンだとすると、アイツは世界を守る魔法少女。そのぐらいメルヘンな頭をした人間なのだ。
「兄さん聞いて。さっき見たホラー映画が怖くて一人で寝れないの…一緒に寝てよ。」
あぁ、うるさいうるさい。さっきお前が見ていたのはお笑い番組じゃないか。俺がニュースを見ていたにも関わらずチャンネルを横取りされたのでよく覚えている。
俺は今まさにホラー映画より怖い痴女に襲われようとしているのだ。そんな事に構ってなどられるか。
寝よう。寝れば全てを忘れられる
そして次の日…
今日も真夏の日差しが部屋に入り込み俺を起こしてくれた。冬ほど起きづらいくはないが真夏の日差しというのは何かを彷彿させる。
あぁ…そうか…あのうるさい小娘と一緒だ。やたらとからんできて体力をどんどん奪っていく。
朝から後ろ向きな事を考えても仕方が無い。俺は顔を洗うため洗面所に向かった。
洗面所には妹が先に歯をみがいていた。出来れば顔を合わせたくはなかったが…
「青葉、おはよぅ。」
「おやおぅ。(おはよう)」
俺は妹に挨拶した。歯を磨いているので変な言葉で挨拶を返してきた。
コイツが俺の妹の風間 青葉(かざま あおば)
同級生にはぼちぼち人気があるようだが、俺はダメだ。ルックスも別に悪くないしプロポーションも歳の割りには出てるとこは出てるし引っ込んでるとこは引っ込んでる。
だが…だがね。女の価値はそんなところじゃない。器量なんだ…そう器量なんだよ。
ヤマトナデシコだって見た目だけで美人と言われたんじゃないさ、心なんだよ!!それがあったからそこまで上り詰められた。
朝から物凄く語ってしまった。こんな事では話が進まないので止めにしよう。
俺は自分のハブラシを手に取った。
「ん?」
俺のハブラシは青かったはずだ。しかし洗面台には赤いハブラシしかない。一体どういう事だ?一体…
家の洗面所にはハブラシが2本しか置いてない。俺が青、そして青葉が赤の2本だ。
…俺は重大な事に気が付いた。2本しか無いハブラシで俺のハブラシが行方不明。そして俺は今青葉のハブラシを手にしている。
しかし、しかしだ。青葉は平然と歯を磨いているんだ。
「青葉…お前もしかして…」
「あにゅ?」
信じたくたい事だった。信じがたい事だった。
青葉が使っていたハブラシの色はまさしく青。今日の澄み切った空のような青だった。
「そうか…青か…青いなぁ今日の空は。」
「そうられ〜(そうだね〜)」
「そうだねじゃねぇよ。お前それ俺のハブラシだろうがぁぁああああ。」
ふぅ、先ほどは熱くなってしまったがアイツのペースに惑わされてはならん。平常心だ平常心が大切なのだ。
俺はキッチンに行き朝飯のトーストを焼き始めた。いつものようにトーストを食べてニュースを見るんだ。
「兄さん、コーヒーのみますか?」
俺がトースターにトーストをセットしていると青葉が言った。やはりトーストにはコーヒーがつきものだ。
「あぁ、ホットで頼む。」
「はい、分かりました。」
まぁ好かれているってのも悪くはない…時もある。普通は顔も合わせないぐらい仲が悪いと聞く。
このぐらいなら俺も許容範囲の愛情表現だ。
俺は朝のニュースを見るためテレビのスイッチを入れた。
「愛情表現か…」
青葉の場合、それは並大抵のものではない。先ほどのハブラシ事件を見てもそれは分かる。
心配になった俺はこっそり青葉がコーヒーを入れているところを覗いた。
「あ…ぅわ。」
俺は言葉を失った。青葉は俺のマグカップにコーヒーを注ぎ終わると…そこになんと唾液をたらして混ぜ込んでいたのだ。
いつだったか。バレンタインのチョコレートに自分の唾液を入れると恋が叶うというまじないを聞いた事がある。その類のものか…
俺はため息をついて元いた場所に戻った。
しばらくして青葉がコーヒーをかかえてこちらに来た。
「兄さん、今日のコーヒーは飛びきり美味しいですよ。さぁ冷めないうちにどうぞ。」
青葉は俺の前にコーヒーを置くと、さぞ嬉しそうに俺を見つめている。それはそうだ、このコーヒーには青葉のアレが入っているのだ。
間接キスなんてもんじゃない。これはもはや性的接触と言ってもいい。
「青葉、今日のコーヒーはなんで飛びきり美味しいんだ?」
「それは私の愛が込められているのですよ。」
愛…か。兄弟愛、家族愛なら甘んじて受け入れよう。しかし、しかしだ。屈折している、これは万華鏡なみに屈折しているぞ。
「青葉、お前もコーヒー好きだったよな。飲めよ。」
俺はコーヒーを青葉に勧めた。回避するのはこれしかない。さすがに捨てるわけにはいかん。
「いいえ、兄さん。兄さんのマグカップでコーヒーを飲むなどそんなはしたない事できませんわ。」
それ以上の事してるくせによく言うぜ。まぁいい、しょうがない。部屋に持ち帰って捨てよう。
「それより兄さん。夏休みですし、旅行など行きませんか?」
ハッキリと言いたい。イヤだと…
まぁ話ぐらい聞いておこうか。
「それで、何処へ行くんだ?」
「えぇ、私達半年も父さんや母さんに会ってませんし、会いに行こうと思いまして。」
会いに行くって。もしかして宇宙に行くっていうのかよ!?
「ホンキかお前?」
「えぇ、私も父さんや母さんに会いたくなってしまって。」
青葉は悲しげな表情で言った。
まだ14歳だし、両親に会いたいって思うのは当然だよな。俺は結構冷たいし。コイツが異様に俺に迫るのは寂しいからだったのかもしれない。
なんだか俺は青葉がかわいそうになってしまって、この旅行に行く事に決めた。
「分かったよ。行くよ。」
「本当ですか!?すぐ準備しますね。」
青葉は本当に嬉しそうな顔で準備を始めた。
俺はそのスキにコーヒーを台所に捨てに行った。
この決断が…後に俺の人生を決める大変な自体になるとは、今の俺には知る由も無かった。
そして旅行の日。
俺たちは宇宙船に乗り込む。しかし青葉が予約した宇宙船の形に俺は度肝を抜かれた。
普通の列車の形をしているのである。しかもSL…
今時線路の上でもこんなのは走っていない。一体何の冗談なのか…
とりあえず俺は列車(宇宙船)に乗り込んで席に座った。
まぁ冗談だろうが本当に空でも飛んだら面白いぐらいの勢いだけだった。別に本気にしていた訳じゃない。
俺は向かいに座った青葉の顔を見た。ニコニコと笑っていてやけに楽しそうである。
この笑顔には見覚えがあった。あのコーヒー事件の時の顔だ。
何かを企んでいる顔だった。
「おい、青葉。お前一体何を企んでいるんだ?」
俺が聞くと実際聞こえてきそうなぐらい ギクッ という顔をして答えた。やはり何か企んでいるらしい。
「イヤですわ。兄さん、何も企んでなんか…」
そう言いつつ青葉が後ろに何かを隠したのに俺は気が付いた。俺は素早く手を伸ばしてそれを取った。
「あ、兄さんダメです。」
それは一枚の書類。難しい字の羅列が重要な文書である事物語っている。
「なになに?こ…ん…いん…婚姻届!?!?!?!?」
それは愛し合う男女が役所に提出するアレだった。提出したが最後世間的にアレな関係になってしまうシロモノだ。
「青葉、これは一体どういう事だ?」
「そ…それはですね。ま、まぁちょっと頑張りまして兄弟でもアレ出来るように役所とか偉い人にアレしてでですねぇ。両親の許可があれば…アレ出来るわけですよ。」
アレが多すぎて普通なら分からんが、今の俺にはハッキリとアレの部分が理解できる。まさか…まさかだよな。
本当にこの列車が飛んじまったら俺は…
「おい!!俺は降りる、降ろしてくれ!!」
急いで出口へと向かうがすでに出発が近いらしく扉は開いていない。
クソ…しかしこんな列車が宇宙に、いや宙に浮くはずがない。どうせどっかの駅に止まるさ。
しかし、俺の期待も虚しく。列車は線路を離れ、星が輝く空へと飛び立った。
「ウソ、だよな…」
そうして俺は、この青葉との婚姻届に親のサインを貰うべく宇宙へと旅立った。
一体この先、俺の人生はどうなってしまうのだろうか…
「誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!」
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